2007年5月27日 (日)

圧倒的な虚無感

少し前になるが、ロメロのゾンビ(原題:DAWN OF THE DEAD )を観て、その世界観に今更ながら驚いた。
ホラー・スプラッタ映画は積極的に見る気にならない(というか怖いのはキライ)ので、いつか見ねばと思いつつ先送りにしてきたが、観なかったこれまでを少し悔やむ。

ゾンビとは語るまでもなく、生ける屍のことだが、「生きた死体」なのは人間の死体であるばかりでなく、作品内の世界そのものが「生きた死体」という強烈なイメージに圧倒される。
煌々とした照明、薄っぺらな音楽、そして脳天気な店内アナウンスにむなしく彩られた無人(でもゾンビだらけ)のショッピングセンター。生前の習慣だからなのか、そこに集う、つい最近まで人間だったモノたちの夥しい群れ。作品世界を覆うのは絶望すら通り越した圧倒的な虚無感。

この作品において恐怖映画的な要素と言えば当然、「人を喰らう夥しいゾンビ達」、ということになるのだろうが、現在の目から見ればほほえましいとすら思える特殊メイクと残酷シーンであるがゆえに、映画の描くあまりにも空しく寒々とした世界観がより際立つように感じる。

「明るく彩られた廃墟=ショッピングセンター」とそこに集う「さっきまで人間だったモノ」という構図がもたらす荒涼とした不在感はこの映画のすべてといっても言い過ぎでもないように思う。「死んだ世界」を当時ここまで描いたのであれば歴史的名作というのも頷ける。

昔、洞沢由美子がアニメージュに連載していた漫画「D[di:]」を愛読していたのだが、あの描写の一部はロメロのゾンビの翻案であったのかと今になって思う。(それをパクリのなんのというつもりは一切ない。というか多少の類似を鬼首で指摘する最近の子供にはうんざりだ)
当時中学生だった自分は洞沢が描く絵柄が好きだったというのもあるが、そこに描かれる世界観も気に入っていた。極端に言うと「死んだ世界」を歩きたいと夢想していたのだ。
「D[di:]」でも描かれる無人となった店舗での気ままな無銭ショッピング(要するに堂々と盗んでいる)は妙な憧憬となった。「うる星やつら・ビューティフルドリーマー」においての食料調達(食料のタダもらいってのが押井守的か)と同様に。

しかしこの映画で一番好きなのはラスト付近のショッピングセンターに併設されたスケートリンクを大勢のゾンビがうろうろと意味もなく歩き回る映像。なんか…もう、スゴ過ぎるわ、この画。脳が焼けるかと思った。エンドロールの脳天気BGMもイイ。これ撮ったヒト、天才だ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)